元添乗員が伝授 秋冬のパリ 街歩きガイド【旅行のエキスパートシリーズ】

旅行を計画する際のお悩みに、旅行のエキスパートが集うトラベルズー編集部スタッフが応えます。「ホテルはどこに泊まればいいの?」「定番ではない穴場はどこ?」「おすすめのお店は?」…などなど、おさえておきたい耳より情報が満載です。今回は、これからのパリ旅行を検討中の方に向けて、「秋冬のパリ」の楽しみ方をお伝えします。
【この人に聞きました】Shihoko Akahira
旅行会社勤務時代に国内外の旅行ツアーを企画し、添乗員として29か国をアテンド。ワーキングホリデーでのカナダの現地ガイド経験や、プライベートでのアメリカ横断旅など、海外経験が豊富。とくにフランス全域およびパリの街歩きに精通しており、トラベルズー編集部の“フランスのご意見番”として厚い信頼を得ています。
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Q、ホテルはどこに泊まればいいの?
A、すっごく細かくなりますが…、まず前提として、そもそも「パリ市内」の定義から始めさせてください!
パリ市内は1~20区に分類されます。東京都の区部が23に分かれているのと似ていますが、広さとしては東京の7区分、山の手線内に収まる広さです。空港は郊外に2つ。1つはCDG(シャルル・ド・ゴール空港)、もう1つは、ORY(オルリー空港)。主に国際線はCDG、国内線とEU線はORY発着となります。列車は、東京駅のようなターミナル駅はなく、4つある主要駅から、それぞれ行き先ごとに路線が分かれます。
ですので、ホテルは利用する空港や列車、観光の目的に合わせて選ぶのがベスト。詳細は、後述します。
Q、定番のパリの名所は。
A、まずはやはり、モナ・リザが必見のルーヴル美術館。モネやゴッホなど、印象派や後期印象派の名作を展示するオルセー美術館も外せません。世界遺産にも登録されているノートルダム大聖堂は、2024年12月の火災から復活し、2025年から再度、見学できるようになりました。事前予約が必要ですが、予約受付は2日前からなので、渡航に合わせて予約することを忘れずに。見学は基本、8~19時なので、もし予約が取れなくても、近くまで散策してみてもいいですね。
※参考 ノートルダム大聖堂 チケット予約ページ:https://resa.notredamedeparis.fr/en/reservationindividuelle/tickets
そのほかの定番は…
・エッフェル塔:セーヌ河沿いの建つパリのシンボルです。人気観光地のため、当日予約は難しい場合も。60日前から事前予約が可能なため、早めの予約がおすすめです。第1、2、3展望台 (サミット) に登ることができ、どこまで登るか、登る手段(エレベーターまたは階段)によって料金が異なり、14.5ユーロ~36.1ユーロ。
・シャンゼリゼ通り&エトワール凱旋門:最寄り駅はシャルル・ド・ゴール・エトワル駅。
・ムーラン・ルージュ:パリ北部・モンマルトルにある、映画にもなった世界的な知名度を誇るキャバレー。ドリンク付きショーなら25,000円。せっかくなら見てみたい、という方におすすめ。日本の旅行会社経由でも、現地集合・解散のチケットを購入できます。
※参考 HIS 海外オプショナルツアー:https://activities.his-j.com/TourLeaf/PAR0273/
・世界遺産・ベルサイユ宮殿:最寄り駅はヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ駅。
・世界遺産・モンサンミッシェル:パリからバスで片道約4時間。パリ市内発の日帰りツアーもあり。20,000円前後が相場です。
Q、旅行会社のパッケージツアーの予約を検討中。旅程を見ると、1日目は早朝にシャルル・ド・ゴール空港に到着するが、パリの朝はどのように過ごすのがベスト?
A、空港到着からパリの中心部へ、移動にはだいたい1時間~1時間半はかかるので、市街地に到着する頃には朝食の時間になっているケースもしばしば。それであれば、朝は有名なカフェでのモーニングはいかがですか。例えば、サンジェルマンにある老舗カフェ「カフェ・ド・フロール」や、サルトルなどが通ったことで知られるカフェ「レ・ドゥ・マゴ」など、朝7時半頃から営業しているカフェは狙い目。「朝食は機内で食べるから、いらないわ!」という場合には、ルーブル美術館へ直行し(開館前でも、ガラスのピラミッドの近くまで入れます)や、隣接するチュイルリー公園を散策してみてはいかがでしょうか。観光客がいない、早朝のパリの散策も“良き”です。
Q、上級者向け:秋と冬のパリを自由に散策したい。この季節ならではの楽しみ方は?
A、旅慣れた方には、下記をおすすめします。
・グルメの秋:11月の第3木曜のボジョレー解禁日以降は、ワインバーなどで新酒を楽しめます。本場のワインバーに出かけるのもいいかも。食べ物なら、ジビエときのこの季節でもあるので、有名なレストランに行ってみるのもいいかも。
・芸術の秋:貴族の邸宅を改装した「ジャックマール・アンドレ美術館」がおすすめ。ルネサンス絵画と、銀行家夫妻による収集品や豪華な内装など、“ブルジョワ”な雰囲気を身近で体感できます。館内のティーサロンでは、軽食も取れますよ。マルモッタン・モネ美術館も、モネの作品と19世紀の元侯爵の邸宅を両方楽しめる、素敵な場所です。
Q、上級者向け:パリだけじゃなく、もっと郊外に行きたい!
A、シャンティイ城は、意外にパリから足を延ばしやすい名所(パリ北駅 → Chantilly-Gouvieux駅まで約25分、駅から徒歩20分またはバス)。プリンセスのお城、という印象が強い、ルネサンス期のお城で、コンデ美術館という美術館も併設されています。
もっともっと郊外へ…という方には、オーヴェル=シュル=オワーズもおすすめです。かつて芸術家が多く集まった土地で、ゴッホの終焉の地として、ゴッホゆかりの場所が多くあります。こちらもパリ北駅から、 Auvers-sur-Oise駅まで直行なら約1時間と、アクセスしやすいのはうれしいポイントです。秋なので、オーヴェル=シュル=オワーズの川沿いをお散歩…など、風情があって良いですね。
【詳説】20区それぞれの特色:ホテル選びガイド
1区:パリの中心!
ルーブル美術館やチュイルリー公園、オランジュリー美術館、パレ・ロワイヤル、ポン・ヌフ、裁判所など、観光名所が多い。その分、スーパーなどもほかの区に比べるとちょっと高かったりもする。ブランドショップ通りのサントノレ通りもオペラ通りもあるので、パリジェンヌの気分で歩くことができる。ただ、この辺を通っているメトロでは、スリが多いので注意。
2区:オペラ座周辺(オペラ座は9区)
日本語の通じるショップやレストランが並び、1区と2区にまたがるサンタンヌ通りがあります。2区の方には、日本人街もあり。証券取引所、国立図書館、オペラ大通りなどが観光名所。オペラ大通りは、観光には最適!お土産屋さんやスーパーもあります。シャルル・ド・ゴール空港と2区をノンストップで結ぶアエロポートバス(ロワシーバス)があるので、初めてのパリでホテルを探すなら、この区がおすすめ。
3区:マレ地区
パリの流行の発信地!ピカソ美術館、カルナヴァレ美術館、国立古文書館のほか、オシャレなお店がたくさんあります。そして、昔からある情緒豊かな建物やボージュ広場など、趣のある街並みが特徴。ユダヤの街でもあり、ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」を提供しているお店も多数あります。
4区:シテ島が中心
観光名所はポンピドゥー・センター(2025年9月末より改修のため5年間休館予定)、パリ市庁舎、ノートルダム大聖堂、サン・ルイ島など。地元の人には、「4区がパリの中心」と言う人も。大型ホテルは少ない。
5区:学生街、カルティエ・ラタン
パンテオン、パリ第3~第6大学(ソルボンヌなど)、クリュニー美術館、モスクなどで知られる区。学生街なので、リーズナブルなレストラン、カフェ、古着や本屋なども多い。サンミッシェルの辺りに行くと、エキゾチックなレストランやクラブも多数。比較的ホテルも安め。
6区:リュクサンブール公園などありのんびりした雰囲気
後述する7、8区同様に土地代が高く、ホテルラインアップは多くなく、あってもラグジュアリー系。オデオン座、サンジェルマン・デ・プレ教会などが名所です。
7区:エッフェル塔と高級住宅街のエリア 役所系も多い
観光客はとても多いが、この区に住んでいる人たちはいわゆるお金持ち。レストランもグレードが高い印象。ホテルはエッフェル塔を望む大型ホテルなどあるが、高級住宅街に位置するため、やはりほかのエリアよりも宿泊料金は高い。
8区:ショッピングとセレブのエリア
凱旋門、シャンゼリゼ大通り、グラン・パレ、プティ・パレ、エリゼ宮、コンコルド広場、マドレーヌ寺院…と、人気観光地が多数。パリでもとくに家賃が高い区です。シャンゼリゼ大通りには、フランス発祥ブランドの本店が多数あり。シャンゼリゼ大通りのレストランの価格は”観光客料金“で、ほかの区のレストランよりかなり割高。シャンゼリゼ大通りにいるのはほとんどが観光客です。深夜まで開いているスーパーや、24時間営業の薬局もあるので便利ですが、ホテルはどこも人気で、旅行会社のパックツアーの宿泊施設の候補には、この区のホテルが含まれないこともしばしば。8区に宿泊したい場合は、ツアーよりも航空券とホテルを個別に手配すると、割安になることも。
9区:デパート街
オペラ座、「ギャルリー・ラファイエット」や「プランタン」などのデパート、ギュスターヴ・モロー美術館、ピガール広場などがある区。9区の南寄りの地域は、2区のオペラ座からそんなに離れていないので、観光拠点にもなり得ます。ユニクロやAppleストア、デパートもたくさんあり、お土産や買い物には適した場所。
10区:パリのターミナル駅が2つある区
パリを代表する大きな駅「北駅」と「東駅」がありますが、この2つの駅は地方からの列車が乗り入れるため、治安の面では不安あり。
11区:カナル・サンマルタンが有名
若者たちが夜に集う地域で、クラブやバーがたくさん。北マレの辺りはオシャレエリアなので、ファッションスポットとしても知られます。カナル・サンマルタンは、映画「アメリ」にも登場した運河。バスティーユ広場、レピュブリックなどの広場もあります。
12区:森と新しい建物の融合地
家族連れが多く住むエリア。オペラ・バスティーユ、リヨン駅、ヴァンセンヌの森がありますが、観光の拠点としては不便。
13区:チャイナタウン
中華のレストランや、タイ、ベトナム料理、などの店が多数。ミッテラン国立図書館もこの区にあります。
14区:モンパルナス
モンパルナスの駅周辺は、北域の列車のターミナル駅ということもあり、クレープレストランが多数。宿泊料金はリーズナブルながら、客室の広いホテルが多い。キチネット付きのシタディーヌ(アパートメントホテル)も多数。メトロ駅も複数あるので、長期滞在には便利。
15区:韓国系のレストランが多め
観光名所はブールデル美術館、パスツール研究所、ブラッサンス公園、アンドレ・シトロエン公園など。2区側のサンタンヌ通り沿いには日本料理のお店が建ち並びますが、15区は韓国系のレストランが増えています。
16区:パリで最も高級なエリア
ラジオ・フランス、テニス4大大会の会場の1つである「スタッド・ローラン・ギャロス」のある区。日本人も多く住む。パッシー通りはセレブなお買い物ができる。治安も良いが、ホテルの宿泊料金は高い。有名なホテルは『Sofitel Paris Baltimore Tour Eiffel Hotel』や『Shangri-La Paris』など。観光するなら、シャイヨー宮、現代美術館の「パレ・ド・トーキョー」、ギメ美術館、マルモッタン美術館など。
17区:オフィス街
凱旋門から離れると、企業のオフィスが多い。したがって、観光するなら凱旋門のみ。
18区:治安に不安あり、観光スポットは多数
ロートレックやユトリロなど、昔から多くの画家が居住してきた区。坂道や階段が多い。サクレ・クール寺院、ダリ美術館、ムーラン・ルージュ、モンマルトル墓地、ぶどう園など、映画「アメリ」に出てきたロケ地も複数あります。ピガール駅の周辺は治安が良くなく、夜の街歩きはおすすめできません。
19区:多民族の街
観光名所として挙げられるのはヴィレット公園、ビュット・ショーモン公園。他民族が暮らす地域で、パリというよりもどこか異国の地に来たかのような雰囲気が漂う区。
20区:こちらも多民族が暮らす街
ペール・ラシェーズ墓地、モントルイユ蚤の市、ベルヴィル公園で知られます。モントルイユ蚤の市は日本人にも人気。治安が悪く、スリが多いので注意。
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