インドの“固定観念”が音を立てて崩れた話

2025/12/14

インドと聞くと、どんな光景を思い浮かべますか?

カレーとガンジス川、混沌と喧騒…。そんなイメージのまま時間が止まっている人は少なくありません。でも、20年ぶりにインドへ降り立った筆者は、空港に着いた瞬間に思いました。「あ、これ完全に別物だ」と。

ギラギラした瞳で声をかけてくる白タクは消え、洗練されたUber乗り場。想像以上に快適だったホテル滞在、食と人との出会い…。今年10月にムンバイを訪問した筆者が、現地の最新事情をレポートします。


■20年ぶりのインドに心躍らせて

今回訪れたのはムンバイ。人口世界一となったインドを象徴するように、都市の発展ぶりは想像の何倍もパワフル。煌びやかな高層ビル群が海沿いに連なり、まるで“インド版マンハッタン”。ダイヤモンドのように輝く夜景は、誰もが頭の中で描いているインド像と、“ワット数”がまるで違います。

さて、この街の面白さはここから。

高層ビルが立ち並ぶすぐ下には世界最大級のスラムが広がり、貧富が文字通り隣り合わせ。それでも悲壮感はどこにもなく、子どもたちは楽しそうに走り回り、定員オーバーで詰め込まれた車の中から手を振ってくれる。

そこには「貧しさ」ではなく、「たくましく暮らす日常」が息づいていました。

(上段左)割り込みがヒドい(笑)インドの交通事情(上段右)インドのマンハッタンことムンバイを遠くに望む(下段左)最大級のスラム街(下段右)ムンバイの街中で1枚

車も人も「前にしか進めない」のは20年前と変わらない部分で、どんどん割り込んでくるためクラクションが鳴りやまず、鳴らしたとて誰も譲らず。その車の間を縫って、平然と人や牛が横切って行く様子を見ているだけでも一種のアトラクションのようで、車窓からの風景に飽きが来ないのは相変わらずでした。そんな光景を眺めていると、これぞインド、と胸を躍らせずにはいられません。


■映画の舞台になった5つ星ホテルに滞在

何よりも、過去のイメージと異なり驚いたのは、旅の快適さ。5つ星ホテル滞在と、Uberでの移動を組み合わせれば、ぼったくりの心配はゼロです。

今回滞在したのは、ムンバイのシンボルでもある『ホテル ザ タージ マハル パレス ムンバイ』。外観も圧巻ですが、海を眺めながらのアフタヌーンティーやマハラジャ気分になれる豪華なプールなど、日本でもヨーロッパでも味わえないような非日常に浸ることができました。

(左)ホテルでいただいたアフタヌーンティー(中)パステルカラーが印象的なホテル内の回廊(右)視線を上に向けると…ホテルの建築美にうっとり

ホテルスタッフのホスピタリティも素晴らしく、マニュアル以上の裁量を持って、こちらの気持ちに寄り添うように動いてくれます。

民族衣装のサリーを買ったものの自分で着れず、コンシェルジュに相談したところ、ホテルで購入したものではないのにショップスタッフが着つけをしてくれました。日本で海外観光客が着物を着ているとうれしく思う感覚に似ているのでしょうか? 現地ではたくさんの人がサリー姿を褒めてくれ、大切に、丁寧に接してくれた気がします。

各国の王族やVIPの定宿の5つ星の老舗ホテルですが、そんなスタッフの気取らず、ほどよく距離が近い接客は、日本のラグジュアリーホテルとはまた違う温かさ。食事だけでもできるので、ムンバイに行ったら立ち寄りたいところです。

ちなみにこのホテルは2008年の「ムンバイ同時多発テロ」の舞台となり、大きな被害を受けました。勇気あるホテルマンたちが誇りと命をかけて宿泊客を救い、多くの人々が生還を果たした実話の映画「ホテル・ムンバイ」を見てから訪問すると、胸が熱くなること間違いなし。


■そのイメージ、アップデートが必要です

食の幅広さもぜひ強調したいところ。インド=カレーの一択だと思っていると、完全に意表を突かれます。

朝食のポハ(押し米のスパイス炒め)はやさしい風味で胃にすっと入り、キチュリ(豆と米のおかゆ)は、旅の疲れた体を包み込むように染みわたる。スパイスが効いていない料理も豊富なので、「インド料理は辛い、重い」と思っている人ほど感動するはずです。

(上段)カラフルなスイーツ(下段左)インドのお米フレーク「ポハ」(下段右)インドのおかゆ「キチュリ」(右)おしゃれなローズロティ

食に関するイメージが固定されやすいのもそうですが、SNSではインドの“ネガティブな部分”だけが切り取られがちで、それをずっと残念に感じていました。

実際に現地に行ってみると、エアコンの効いた日本車タクシーや、日本と同じくらいにきれいなトイレもたくさんあり、旅の仕方を工夫することで快適なインド旅は実現できる! と感じました。


街中では、シャイで優しく、見返りを求めず親切にしてくれる人たちとも出会えました。皆さん本当にフレンドリーで、外国人観光客が珍しいのか「一緒に写真を撮って!」とお願いされ、どなたかの家族写真のド真ん中に鎮座(笑)。気づけば誰かと笑いながら話している—。どこに行っても、そんな空気感があったインドでの旅。

日本に帰国してしばらく、道を歩いていても誰にも話しかけられないことが寂しく、クラクションの音が恋しくなり、インド料理屋を見かけるとついつい入ってしまう「インドロス」状態でした。あまりにも“沼って”しまったので、必ず近いうちにまた訪問しようと思っています。

20年前と変わったところ、変わらないところ、いろいろな表情を見せてくれたムンバイ。これまでインドに抱いていた固定観念を取り払い、「先入観を捨てて行ったら、想像以上の別世界がそこにあった」—そんな旅が、きっと待っています。

(左)ムンバイのインド門にもサリーで出かけました(中)記事冒頭で触れた“ダイヤモンドのように輝く夜景”(右)英国建築とムンバイの文化が印象的な市庁舎

■筆者の結論:インドはこんな人におすすめ

・定番の海外は行き尽くして、次のワクワクを探している
・インドのイメージを書き換えたい
・ラグジュアリーとローカル、両方を一度に味わいたい
・旅先での人との温かい交流が好き
・フードカルチャーが豊かな都市が好き


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